さて今回は、房総リザーバーのメジャーフィールド、三島湖へ行ってきました。目的は、翌日に行われるルアマガプライムの人気企画【スラッグフェスト(SLUGFEST)】に向けた直前プラクティスです。
今回のレギュレーションはなんと「スピナーベイトオンリー」! ハードルアーの中でも非常に奥が深く、アングラーの状況判断力とルアー理解度が試される縛り戦です。

当日の三島湖のコンディションですが、水温は約20℃。秋の適水温期とはいえ、先日の記録的豪雨による強烈な濁りがまったく取れておらず、カフェオレ色に近い濁水が湖全体を覆っていました。
「秋、水温20℃で強烈な濁り」と聞けば、一般的なバスフィッシングのセオリーでは「スピナーベイトが最もハマる巻き物天国」と考えがちです。濁りによってバスの警戒心が薄れ、視界が遮られることで、強い金属ブレードのフラッシングと水押し(波動)にたまらずバイトしてくる……そう考えるのが普通です。
しかし、実際のフィールドはそんなに単純ではありません。朝イチから湖上に浮かび、ライブスコープの画面を見ながらスピナーベイトを各レンジへ通していきましたが、魚の反応は驚くほど皆無。チェイスすらほとんどないのです。
結局、ライブスコープを見ながら巻き倒しても、午前10時までノーフィッシュ。バイトらしき反応はわずか1回、それもフックオフに終わるという非常に厳しい展開です。
その唯一バラしてしまった1本について、少し触れておきましょう。ルアーはティムコのコンパクトスピナーベイト「キュアポップスピン 7g」。
水深のある岬の先端に対し、冬場のメタルジグのようにリフト&フォール――いわゆる「深めのしゃくり」を入れた瞬間に、リアクションで食ってきたものでした。
サイズはおそらく30cmクラスと小型でしたが、強引に寄せようとしたところで外れてしまいました。岬の先端各所には、このサイズがボトムべったりに群れていました。

サイズ的には参考記録程度ですが、ノーフィッシュの時間とこの1本のバイトは私に大きなヒントをもたらしてくれました。それは、「中層のスイミングには一切反応せず、ボトムを絡めた釣りにしか口を使わない」という事実です。
急激な水質悪化(大雨の濁り)が起きると、バスは中層を回遊してベイトを追う動機を完全に失います。視界が効かない中で体力を消費して泳ぎ回るよりも、ボトムの沈みモノやカバーの根元にタイトに身を寄せ、目の前に来たものだけを捕食する待ち伏せモードに移行してしまうわけです。
さて、ここで重要になるのが、「バスのポジション」と「スピナーベイトというルアーの物理的特性」をどう考えるかという点です。
湖全域をチェックして確信したのは、「バスは完全にボトムやカバーに張り付いており、一切浮いていない。また、長距離ルアーを追ってくる行動を見せない」ということでした。
中層を気持ちよく泳がせてくる通常のスピナーベイティングや、私が得意とするライブスコープでのサイトフィッシングは、この日の状況下では完全な「悪手」です。
特にスピナベライブサイトでは「ルアーを少し浮かせて」仕掛けるのが普通です。バスがボトムべったりの状態だと、効果は薄いのです。
スピナーベイトは構造上、巻けば巻くほどブレードの揚力(水を捉えて浮き上がろうとする力)が働き、ルアーがボトムから離れて上へ上へと浮き上がってしまいます。つまり、「ボトムにいるバスにアプローチしたいのに、ルアー自体はボトムから逃げてしまう」というジレンマに陥るわけです。
大型のバスほど、ブッシュやレイダウンの根元、あるいは崩落の岩やガレ場、急峻なブレイクラインのボトムに身を潜めていました。
とはいえ、崩落のど真ん中にスピナーベイトを無防備に放り込めば、一瞬で根掛かりしてしまいます。狙うべきは、「シャローのボトムを絡められる場所」でした。水深にかかわらず、バスたちはボトムや壁を意識しながら生活しているためです。
湖を巡り、鯨島周りから豊英筋(とよふさすじ)へと上がっていくと、平日にもかかわらず多くのアングラーで賑わっていました。
周囲の一般アングラーの釣果を聞くと、やはり釣れているのは「ワームによるボトムの釣り」でした。崩落の奥をパワーフィネスで丁寧に撃ち込んだ方が52cmのビッグバスをキャッチしていたり、ブレイクをヘビキャロでじっくり探っている方が数を伸ばしていたり……。
要するに、「バスを釣る」だけであれば、ボトムにワームを沈めてスローに誘うのが圧倒的な正解なのです。
しかし、明日のスラッグフェストは「スピナーベイト縛り」。ワームという逃げ道は存在しません。この「ワームでしか食わないようなボトム執着状態のバス」に対して、いかにスピナーベイトで口を使わせるか? という難問を解く必要があります。
今回さらに意識したのは、スピナーベイトの存在感を上げ、本気食いにつなげることです。つまり、「気づかせて本気食いさせる」アプローチの有効性です。
アピール力の弱いスピナーベイトや地味なカラーを通すと、バスは迷いながらルアーを追うため、ショートバイトで終わってしまいます。
しかし、ブレードは水押しの強いインディアナブレードを選び、スカートやトレーラーにも視認性の高い派手なカラーや大きめのボリュームを組み合わせて存在感を際立たせれば、バスの迷いを消し去り、威嚇や捕食本能のスイッチを入れて「本気食い」へ昇華させることができるのではないかと考えました。

今回のプラクティスでは、トレーラーフックを「装着したモデル」と「装着しないモデル」の両方を用意し、現場で徹底的に投げ分けて検証を行いました。
一般的には、「ショートバイト対策=とりあえずトレーラーフックを付ける」というのが定説になっています。しかし、ルアー開発者の視点、そしてスピナーベイトの本質から言えば、この考え方には重大な落とし穴があります。
本来、ルアーの波動、スピード、レンジ、そしてカラーがその場の状況と完璧に合致していれば、バスはルアーのヘッドを目掛けて深くバイトしてきます。その場合、トレーラーフックなど一切付けなくても、太軸のメインフックがバスの上顎を確実に貫通するはずなのです。
逆に言えば、「トレーラーフックにしかフッキングしない」という状態は、ルアーが状況に合っておらず、バスが迷いながら甘噛みしている証拠にすぎません。
さらに、トレーラーフックを装着することによる物理的なデメリットは甚大です。
スピナーベイト最大の武器である「ワイヤーガードによる圧倒的なスナッグレス性能(障害物回避能力)」が、剥き出しのトレーラーフックによって著しくスポイルされてしまいます。
カバーや岩、沈みモノへ果敢に当てていこうとすれば、トレーラーフックがゴミや枝を拾い、最悪の場合はルアーロストに直結します。中層を攻略するライブスコープの釣りならいざ知らず、スピナーベイトの本質であるカバー回避性能を考えるなら、トレーラーフックは不要です。
つまり、スピナーベイトにトレーラーフックは本来不要、というのが私の結論です。
トレーラーフックという対症療法に逃げるのではなく、トレーラーフックが不要になるセッティング――すなわち、ヘッドを丸呑みさせるための完璧なルアーパワー、スピード、ボトムトレースコースを見つけ出すことこそが、スピナーベイティングの本来あるべき姿だと私は考えています。
そしてもう一つ、大きな決断を下しました。それは、「明日の本番は魚探&ライブスコープを使用しない!」ということです。
現代のバスフィッシングにおいて、ライブスコープは欠かせない武器です。しかし今回のように、魚がボトムやカバーにタイトに張り付いている状況では、画面に映る魚を探して中層をサイトで狙う行為は、完全に時間の無駄になります。
むしろ、魚探画面に意識を奪われることで、岸際のカバーの隙間やボトムの質感を読み取る、アングラー本来の集中力が削がれてしまいます。また、前方に魚探のようなものがあるのは単純にキャストの邪魔になります。
魚探は見ません。水の変化に目を配り、キャスト精度とロッドティップに伝わるボトムコンタクトの感触だけに集中して、シャローをテンポよくランガンしていく。そんなブラインドの釣りに徹するほうが、結果的に魚と出会える確率は圧倒的に高くなると判断しました。
この仮説を検証すべく、夕マズメに、ともゑボート(スタート地点)のすぐ近くのシャローへエントリー。来季の新製品、オーバーシュートSBをシャローのカバーへ当てながらファストリトリーブしていくと……明確な「ドンッ!」というバイト!
上がってきたのは、ジャスト40cmのナイスフィッシュでした!

メインフックがガッツリと上顎を捉えた、文句なしの本気食い。上流のクリアウォーターまで走らなくても、本湖の近場でもキーワードさえ押さえていれば、トレーラーフックなしで魚は確実にヘッドから襲いかかってくれる。その確かな手応えを得ることができました。
これでプラクティスは終了。手にした魚は40cmが1本のみでしたが、収穫の大きい一日となりました。
明日のスラッグフェスト本番、私の頭の中には二つの戦略がありました。朝イチから豊英筋の最上流へ走り、水の良いエリアで浅くボトムが近く、強い波動とハイアピールカラーを武器にビッグバスの本気食いを狙うのか?
それとも、スタート直後から、ともゑボート周辺をはじめとする本湖の激浅シャローを、オーバーシュートSBのボトムコンタクトで撃ちまくるのか?
ともに戦うライバルたち――川村さんや津輕さんといった、スピナーベイトを熟知するトップアングラーも、間違いなくこの厳しい三島湖から独自の正解を導き出してくるはずです。彼らがどのような戦略で挑んでくるのか、そして三島湖のビッグバスは誰のスピナーベイトを口にするのか……?
スピナーベイトという究極のルアーを巡る、一切妥協なきガチンコバトル。
翌日のスラッグフェスト本番の模様は、11月にルアマガプライム等で動画配信予定です! このプラクティスで見出したロジックは、激戦の中で通用したのか? 驚愕の結末を、ぜひ動画配信でご期待ください!

